昔々(院長が勤務医をしていた頃の話ですが)静岡のとあるお寺の近くに、数匹の猫が暮らしておりました。
心の優しいおしょうさんは、おなかをすかせた猫たちに、時々ごはんをあげました。
ところが、1匹の猫だけはいつももみがらの上で寝ていて、おしょうさんが見ている間は決して近づこうとはしませんでした。

そんなある日のこと、おしょうさんが外に出てみると、頭に大ケガをした猫が
「おしょうさん、助けて・・・」といった顔で近付いて来ます。
見ると体にもみがらが付いているではありませんか!
おしょうさんは、その猫が唯一近づいてこない猫だという事に気が付きました。

おしょうさんは猫をかかえると、急いで病院へと向かいました。
「この猫を助けて下さい!」おしょうさんは言いました。
先生は「これはかなりひどい傷ですよ・・でもやれる限りの事はやりましょう」と言って手術に臨みました。
手術は無事に終わり、おしょうさんも肩をなでおろしました。
その後も、猫は順調に回復し、おしょうさんは面会に来ると、いつしか名のない猫を「ふく、ふく」と呼ぶようになりました。
その猫も、人とのふれ合いに喜びを覚え、人が大好きになっていきました。

そして、退院の日がやってきました。
しかし、帰るにもお寺の境内では、猫を飼う事ができません。
また、のら猫に返してしまっては、再びケガをするかもしれません。
おしょうさんも先生も、一生懸命になって、この猫をかわいがってくれる人を探しました。
しかし、飼い主になってくれる人はなかなか見つかりません。
おしょうさんは、「仕方ない、また元の場所に戻そうか・・」と言いました。
その言葉を聞き、先生はしばらく考え言いました。
「それならわたしが面倒みましょう」
おしょうさんは「なんて幸せな猫なんだ」と大喜びし、
「ふく、ふく・・・」と何度も呼び、抱きあげました。
そして、”ふく”という名前は、先生の家でも呼び継がれるようになりました。

その先生が、この地(岐阜)で動物病院を開院しようと決めた時、
「たくさんの動物たちが、”ふく”のように救われ幸せに暮らせますように…」
という願いを込めて、『ふく動物病院』と名付けたそうな。
少し長くなりましたが、これが『ふく動物病院』の名前の由来です。
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それから沢山の年月が過ぎ・・・
ふく動物病院物語② へ続く・・